熊本戦

まず熊本には気の毒であったと言っておきます。ミッドウイークに試合があった中で山形までの遠征。交通機関の乱れで今日山形入りしなければならなくなってしまった事は、本当に大きなハンデとなった様です。それでも前半立ち上がり良くなかったので山形が受けて立つ場面が多くなり、ビルドアップ出来なくなってしまった。高橋が山形左サイドに上がったことやそちらにボール回しが集中したことにより石井が引っ張られる形になった事でレオナルドや宮本が全て左に寄ってしまい右サイドに広大なスペースを作ってしまう。中央によってきた小森田がその右サイドのスペースに展開されフリーであげたクロスに中央に中山が飛び込む形を作ると、山形DF陣が全て引き寄せられ、フォアサイドフリーになった高橋がドンピシャで豪快にヘディングシュートを叩き込まれてしまう。試合開始4分の出来事であった。
岐阜戦で5点取られてはいるがその後の6試合で1点しか取られていないホーム戦だった第1クールにもかかわらず、第2クール緒戦の熊本にこれほど早い時間帯にあっさりと失点するとは思いもしなかった。高橋の動き出しやゴールに対する嗅覚が凄いんだろうなあと思わせられるシュートである。尚このゴールで高橋は2桁に載せた事になる。但しこのゴールが実はこの試合、逆の意味で大きなターニングポイントになってしまうのであった。この後25分位までは中盤でのプレスをかけていた熊本だったが、それ以降は完全に引いてしまい、2ライン+FWが自陣にこもり始める。
山形はこうなると攻めてがなくなるのだがそれでもボールをまわしながらゴール前に上がり始める。惜しい部分でわずかに合わないシーンも多々あったが、失点するような状況は無くなりつつあり、いろいろな局面で仕掛け始めた山形に対して付いて回ることで足を使わされてしまう熊本にとってボクシングのボディーブローのように効いてくる結果となってしまう。
宮沢のシュートなどGK正面を付くようなアンラッキーな部分もあったが、それでも相手のカウンターを食らうことなく前半を0−1で折り返した。
後半5分にリチェーリを北村、10分に財前を宮崎に変えると、山形の動きが俄然良くなる。熊本のコンデションが悪すぎたのだろうが、ゴール前からはじき返してもまったく追うことが出来なくなった熊本に対して波状攻撃を仕掛け始めた山形がようやく同点に追いつく機会が訪れたのが監督が描いた後半の早い時間帯。
後半15分に石川がフリーで左足内側で巻くようにあげたボールに対して、長谷川と相手DFが競り合いとなり、長谷川の足に当たったボールが相手GKの足に当たってこぼれる。そこに交代して入った北村が詰め無人のゴールに流し込んだ。下がりすぎた熊本が一番警戒しなければならない石川をフリーにしてしまったことが原因であろう。前半この石川に対して確実に寄せてフリーであげさせることが無かったのですから。ところで前節の2点といい、今日の同点のゴールといい、このところこぼれだまが旨い具合に山形の選手の前にこぼれてくる状況が続いているが、ポジショニングの良さもさることながらPA内に厚みを持たせたからであろう。
追加点が生まれたのはこの5分後、宮崎がサイドを駆け上がってクロスを入れると、北村がスルーし、長谷川がポストで落とすとそこに北村が詰めてシュート放つとゴール右隅に決まって逆転。
逆転された熊本がようやくゴール前まで上がって打ったシュートを清水が間一髪のファインセーブ。ここで同点に追いつかれてしまっては、引き分けも覚悟しなければならなかった。守護神清水が立ちふさがったといえる。この後連続4度のCKを凌ぐと山形に得点が生まれる。
右サイドを駆け上がった宮本のクロスを、熊本の選手にあたり宮沢の前に毀れる。熊本が誰も宮沢に競ることが出来なかったことが災いし宮沢の狙い済ました左足のミドルシュートが左隅に決定的な3点目決まってしまう。この後山形は時間を見ながら試合を進める山形に対して熊本が手も足も出なくなってしまう。プレスをかけるとそこをかわされ猛然と石川が駆け上がりクロスをあげると、宮崎がフリーでシュートに行くもヒットせず枠外。そしてスタジアムは歓喜の逆転勝利に酔いしれた。
ハーフタイムを終えて出てきた選手たちにゴール裏山形サポが「気合を入れろ」のコールに小林監督に気合が入り、後半非常に早い時間帯にメンバーを変えたことが項をそうし、変わった選手の活躍で逆転勝利に繋がる結果となった。もちろんホーム戦を考慮し引き分けでもいけない。仙台戦まで5連勝で行くと言い切っただけに早い段階で同点に追いつきたかったのだろうと思われる。
また山形の生命線である石川のサイドチェンジに対して財前がどうしても開かずに中に絞ってしまうためうまく試合がコントロールできないことで、前半の残り10分は財前をFWに上げリチェーリを右サイドに寄せたのだが、リチェーリのポジショニングが曖昧すぎてサイドチェンジしたボールに対してあわせることが出来ない。また右サイドをあまりやっていないこともあって相手ボールになると引きすぎるきらいとなってしまい、リチェーリが消えてしまった。
後半この部分の話し合いをハーフタイムでしたはずで、リチェーリをFWに戻し財前を右サイドに戻すも、ハーフタイムでの修正が効かないと見るや即座に北村、宮崎の投入で対応したのであろう。その結果右サイドが活性化し、何度もサイドラインを駆け上がることが出来たといえる。逆に言うと今年の山形は先発メンバーとサブメンバーとの差が無く選手層が厚くなったからこそ、出来る采配なんだろうと思えてならない。今のこの状況に豊田が復活してきたら本当にわくわくするような時期がやってくるような予感がしてならない。